厚生年金基金制度は、国の厚生年金の給付の一部を代行し、さらに企業が独自の上乗せ給付(プラスアルファ部分)を行う制度です。
設立の形態により次の3つに分けられます。
事業主が負担する掛金は全額損金、加入員が負担する掛金は社会保険料控除の対象になります。
厚生年金保険法に基づき厚生労働大臣の認可を受けて行います。
基金の運営は企業が厚生年金基金という特別の公法人を設立して行います。

国の厚生年金保険の一部を基金が代行して行います(代行部分)。
この際、国の給付よりも給付額を大きくする必要があります(代行付加部分)。
また代行部分にさらに上乗せとして独自の給付を行います(加算部分)。
1.加入員
基本部分の加入者を加入員といいます
。(基本部分については「給付の仕組み」参照。)
基金の設立事業所に使用される厚生年金保険の被保険者は、全て基金の加入員となります。
2.加算適用加入員
加算部分の加入員を加算適用加入員といいます。(加算部分については「給付の仕組み」参照。)全ての加入員に公平な設計をする観点から基本部分と同じ適用範囲であることが望ましいとされていますが、加算部分が退職金制度等を移行したものである場合等、適用範囲を退職金規程と同一とすることは一定の条件の範囲で認められています。
また、下記の条件を満たす場合には、加算部分において待期期間(加算適用加入員の加入資格を得るまでに一定の待期を設ける場合の期間)を設けることができます。
以前に加入員であった基金に再び加入した場合の加入員期間は、前後の期間を合算するものとされています。
厚生年金基金未加入のサラリーマンと厚生年金基金加入のサラリーマンとでは、給付が以下のように異なります。

国の老齢厚生年金の一部を代行する(代行部分)とともに、さらに若干の上乗せ給付(付加部分)を行います。
年金額は、次の式で算定されます。
(平均標準報酬月額+平均標準賞与額)× 5.481/1000〜7.308/1000※ ×加入月数
※生年月日に応じ
(注)2003年4月以前の期間については次の式で算定されます。
平均標準報酬月額× 7.125/1000〜9.5/1000※ × 加入月数
※生年月日に応じ
企業独自で設計した年金制度を加算して支給します。
なお基金の給付水準(基本部分と加算部分の合計)には、代行給付の3.23倍という努力目標水準が設けられており、この給付水準に見合う年金資産までは特別法人税(平成25年度までは凍結中)は非課税となります。

厚生年金基金では、将来にわたって約束した給付が支給できるよう、年金資産の積立基準を設定し、受給権確保を図っています。
年金数理に基づく適正な掛金を設定します。
毎年の事業年度末に、年金財政が予定通り推移しているか(継続基準)、仮に基金が解散した場合に過去期間分の給付に見合う資産が確保されているかどうか(非継続基準)を検証します。
少なくとも5年(厚年基金設立当初は3年)に1度、掛金の額の再計算をします
また、その他下記の事項に該当した場合も再計算を行います
「積立金 < 責任準備金 - 許容繰越不足金」の場合、掛金額を再計算しなければなりません。

掛金の額は、予定利率、予定死亡率、予定脱退率等に基づき計算します。
運用収益の見込みに基づき合理的に決定
(注)予定利率下限:厚生労働大臣の定める率
(10年国債応募者利回りの5年平均または直近1年平均のいずれか低い率)
加入者、脱退者、性別、年齢に応じ、厚生労働大臣の定める率
(注)各区分に応じ、以下の率を乗じることが出来る
過去3年以上の実績および予測に基づき決定
実績および予測に基づき決定
「積立金(時価資産) < 最低積立基準額又は最低責任準備金の105%のいずれか大きい額」の場合、
(1)積立比率に応じた掛金の追加拠出
又は
(2)回復計画の作成
を行い、最低積立基準額および最低責任準備金を確保しなければなりません。
ただし、下記のいずれかに該当する場合は当該対応を行わないことも可能です。

「積立不足に伴い拠出すべき掛金 - 翌事業年度掛金」を翌々事業年度に追加して拠出します。
<積立不足に伴い拠出すべき掛金の額>
積立不足に伴い拠出すべき掛金の額=
翌事業年度の最低積立基準額増加見込額 + (下記1.又は2.のいずれか大きい額以上、3.以下で規約で定める額)

財政検証基準日の属する年度の翌々年度の開始の日から7年(10年※)以内に純資産額(数理的評価も可)が最低積立基準額(最低積立基準額×0.9※)又は最低責任準備金の105%のいずれか大きい額を上回ること(積立水準の回復)が見込まれるような回復計画を作成し、基準日の翌々日から1年以内に実施しなければなりません。
※( )内数値は平成24年3月31日までの経過措置
最低積立基準額は、次の1.と2.の合計額とされています。
1.最低保全給付(代行部分を除く)の現価相当額の合計額
最低保全給付とは、過去の加入期間に応じて発生している、又は発生しているとみなされる給付をいい、受給権保護の観点から最低限保全すべき受給権として導入されたものです。
現価相当額は、下記の予定利率、予定死亡率等に基づき計算します。
過去5年間の30年国債利回りを勘案して厚生労働大臣の定める率
当該年率に0.8以上1.2以下を乗じることも可能
加入者、脱退者、性別、年齢に応じ、厚生労働大臣の定める率に各区分に応じ、以下の率を乗じた額
男子:0.95
女子:0.925
規約に基づく指標の予測
2.最低責任準備金
最低責任準備金の算出方法については、平成12年年金改正時の厚生年金保険料凍結に伴い過去法(過去の収支を転がす方式)が導入されていましたが、16年年金改正により、厚生年金本体と財政中立性の観点等から、今後も同方式が継承されることとなりました。
<最低責任準備金の算出方法(転がし方式)>

(注)国からの財源手当とは、過去期間代行給付現価と最低責任準備金との差により国より交付された額
最低責任準備金の適用利率は、厚生年金保険本体の実績利回りを使用します。厚生年金保険本体の実績利回り算定期間と最低責準備金への適用期間には乖離があり、これを「期ズレ」と呼びます(以下表をご参照)。

最低責任準備金(継続基準)とは、最低責任準備金の期ズレを解消したものです。継続基準では、代行部分の債務としてこの最低責任準備金(継続基準)を使用し、最低責任準備金との差額を最低責任準備金調整額として決算で計上します。


(注)厚生年金本体の平成9年度実績4.66%は、平成11年1月〜12月に適用されます。

平成16年年金改正により、過去期間代行給付現価※と最低責任準備金との差について財政調整(国より負担金を交付)を行うこととなりました。
(注)平成17年度決算を元に平成18年より交付等を実施
(政府負担金の精算と同じ事務スケジュール)
※過去期間代行給付現価は、予定利率4.1%、平成21年法改正死亡率を使用し計算した代行相当額(政府負担金部分を除く)の現価

平成16年年金改正により、財政状況が著しく悪化している厚生年金基金を「指定基金」として指定し、財政の「健全化計画」が義務付けられることになりました。
「指定基金」とは以下のいずれかの条件に該当する基金です。
・直近3事業年度の決算において、年度末時価資産が最低責任準備金の9割を連続して下回っている基金
・直近の決算において、年度末時価資産が最低責任準備金の8割を下回っている基金
健全化計画は5ヶ年の計画とし、以下の項目を記載します。
(※1)代議員会の議決を経ることを原則とします。
(※2)以下の(ⅰ)~(ⅲ)に基づいた見通しを策定します。
(ⅰ)最低責任準備金の予測計算に使用する利回りは、厚生年金の直近の財政見通しに使用される運用利回りです。ただし、確定している実績は使用します。
○厚生年金の財政見通しにおける利回り
| 年度 | 運用利回り(%) |
| 平成23(2011) | 1.9 |
| 24(2012) | 2.0 |
| 25(2013) | 2.2 |
| 26(2014) | 2.6 |
| 27(2015) | 2.9 |
| 28(2016) | 3.4 |
| 29(2017) | 3.6 |
| 30(2018) | 3.9 |
| 31(2019) | 4.0 |
| 32(2020)~ | 4.1 |
(最低責任準備金の予測では最大で1年9ヶ月遅れで適用されます)
(ⅱ)基金の資産に使用する利回りは、以下の利率を上限として決定します。
・過去5年間の運用実績の平均
・計画作成時の最低積立基準額に使用する予定利率
・厚生年金の直近の財政見通しに使用される運用利回り
(ⅲ)加入員数は過去5年の実績により適切に見込みます。
年金資産が財政上の負債項目を著しく上回る場合については積立上限額が設けられ、これを超えて掛金を拠出することはできません。
次のいずれか大きい額の1.5倍
※下限予定利率等を使用
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積立金が積立上限額を超える額について掛金控除が必要
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遅くとも翌々事業年度より次のいずれかの方法で掛金の範囲内で控除
(注)利子相当額は下限予定利率を使用
控除後の掛金について、加入員負担の掛金が事業主負担掛金を上回らないこと
(ただし、免除保険料については加入員と事業主がそれぞれ半額を負担すること)